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『edita運営事務局』

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現実逃避の読書日々


私が宮本輝の「二十歳の火影」を初めて読んだのは、
最初の大学受験で失敗し、浪人していたころで、
母が本棚に置いていたのを発見し、読み始めたのだった。

これは氏の初めてのエッセイ集なのだが、
書かれているのは幼少期や青春時代など若い頃のことが多く、
どれも面白かった。


例えば『過ぎし日の二日酔い』では高校生の時、
窓越しで話すうちに仲良くなった隣に住む工員と屋根の上にあがり、
生まれて初めて飲む酒で酒盛りをしていたときに言い争いになって
もつれ合って転げ落ち、さらにヒドい二日酔いになってエライ目に遭う。

その論争が元で、
同じ近所に住む女の子に作者は片思いをすることになるのだが、
あるとき偶然に見かけた彼女の退廃的な姿に愕然とし、
今度は三日酔いぐらいの酒を飲んで、転げ廻ったという話が載っている。


『途中下車』では、
友人と東京の大学を受験しに電車で向かっていた際、
車内で綺麗な女子高生と知り合う。

彼女が艶然たる微笑を残して降りた後、
結局、作者は友人と共に二人で熱海で下車することにし、
温泉に入って、いかにも受験したようなフリをして帰るのだった。
その後、改めてその女子高生に電話してみたが、実は意外な事実が…
という内容である。

よくある日常を綴っただけの単調な話や日記ではなく、
ストーリーも練られ、青春期の思い出が豊富に書かれているのが、
その時の私の嗜好を刺激した。


後書きで、
ある人に、「良い文章で書かれたならそれは全て文学である」と言われ、
編集者には、「随筆を書ければ一人前」だと言われたと書かれている。
そのため作者はこの作品を書くのに、随分と苦労したらしい。

だからこそ作者自身、「詩みたいな随筆だと言われると、
最高の讃辞を頂いた気分になれる」のだと言っている。


また作者はこの「二十歳の火影」に載っている多くのエッセイにたいし、
それらは、自身の小説家的スケッチなのだという。

いつぞやの論評で、
作家がその基となるガラクタをいかに多く持っているかで、
作品の出来が決まるようなことを書いていたと思うが、
このエッセイを読むと、
作者のそれがいかに豊かということが分かる気がする。


浪人時代、私は勉強するのに飽きるとこの本を持ってベッドに寝ころび、
現実逃避をしながら読んでいた。

その頃私は日中に隣の県にあった予備校に通っていた。
そこで初めて受けた現国の講義で、
『途中下車』がテキストに出てきたことがあった。
私は内心、嬉しかった。

だが講師は、講義を始める前にあらすじを述べてから、
「こんなことあるはずがない。これはきっと作り話に違いありません」
というようなことを言った。

書かれた内容が嘘か本当なのかが、どれほどエッセイに、
そして講義や勉強に重要なのかわからないが、
嬉しそうに作りもんだと語る講師の顔が、私にはひどく貧相に見えた。

その講師は講義で本の内容より、
如何に問題の選択肢から答えを見つけるかといった手法や、
『しかし』や『そのため』などに続くべき文章の流れのパターンなどの、
答えを解くためのテクニックについて講義を進めた。

その講義は受験に対してかなり役に立ちそうだったが、
2,3回出席した後、私はその講義に出ることをやめた。

本を読む楽しささえ教えられない現国の講義が、
人生でそれほど役に立つはずがないと思ったから、
といったらいいすぎか。

とにかく国語の問題を解くことより、面白い本を読みたかった。


その後、私は家にある色々な本を読んでいくうち、
受験勉強なんかをしていること自体がとても不毛なものに思え、
やがて予備校での勉強を殆ど放擲し、
日中は公園に行ったり図書館で小説を読んだりして、
ますます受験逃避をしていった。

夕方、いかにも予備校に行ってきたフリをして家に戻り、
とりあえず夜中だけは勉強していた。
小説の内容は良く憶えていたが、
勉強についてはあまり頭に入ってなかった。


その年、同じ作者つながりで読んでいた、
私の一番大好きな小説の舞台が大阪だった、
と言うことだけで大阪の大学を受験した。

漢詩や古文は少し囓った状態で、世界史に至っては、
現代史までまともに憶えていない状況だったにも関わらず、
出題された問題が運良く知ってる範囲ばかりだったため、
なんとか希望の大学での大阪生活を送ることができた。

この受験も、そして二十歳の火影というエッセイに巡り会えたことも、
私の数少ない僥倖のうちの一つである。




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takasuke   2008-07-15 11:24:56 提供:edita運営事務局

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