女王様とわたし
[2011-10-19 07:14:00][
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実家でそれはもうかわいくない猫を飼っていまして、どのくらいかわいくないかといいますとまず目つきが悪いですうさんくさいギロンとした目は今まで百人は軽く詐欺にかけていそうな按配お座りして見上げられるとあまりの怪しさに引き笑いが出てきてしまいます時に目やにの浮き出ている視線をじっとりと向けられれば、猫の奴隷たる人間たちはその醜さに耐え切ませんわたしの両親など、その猫が飯をせびる様を見ていられないようで、
「おねえちゃんにもらいなさい!」
とわたしを呼びつけ猫にかしずかせるのです(ちなみにわたしは猫が家に来るまで末っ子でしたおお、怖い怖い)
しかし奴隷として服従することを大いに喜びとしているわたしは、どんなに大事な用事の途中でも「はぁ〜い」と一オクターブ高い声を出し、うさんくさい猫の前にひざをつくのです
さらにその猫は毛並がとても悪いのです北海道うまれで寒さに備えたその毛は地肌が見えないほど密に生え、14歳という年齢もあいまってそこはかとない獣臭を常に漂わせています触るとごわごわ、どことなく脂の感触幼い頃はアメリカンショートヘアのように高貴な銀色だったはずの毛色も、今では「あなたは今ゴミ箱から出てこられたのですか」と疑いを持ちたくなるほど錆びに錆び
そんな毛並を無防備にさらして、昼寝をするのが趣味なのです
四肢をぐったりと投げ出し、陽光の下に横たわる様子は薄汚れた外見もあいまって雑巾が落ちているかのよう人間はたまらず手をのばします深く生えた毛は日に照らされてぽかぽかとあたたかく、指をふわりと埋めさせ、一瞬でも雑巾などと連想したことを後悔させます
何がいけないかと申しますと、撫でたときに取るポーズが破壊的です
奴隷たる人間が24時間体制でごはんをあげてしまうため、ふくよかなおなかフカフカなそれに指を這わせると気持ちよさそうに身をくねらせるのです目を瞑り、口を笑みの形のように曲げ、肉球のついた前足を丸め……手の動きに合わせてクネクネと身をよじり……もっと撫でろとばかりに腹を見せ……喉からゴロゴロと絶え間なく音を出し……
指にまとわりつくような脂の感触
漂うそこはかとない獣臭
猫はどれにも構わずに指の動きに合わせてクネクネと、腹を撫でられるこそ至上の喜びといわんばかりにいつまでもいつまでも身をよじります五分でも十分でもゴロゴロと言い続けます
とうとう根負けした人間が腹から手を放し、不細工な顔のほうに手を近づけると、ピンク色のざらりとした舌がのびてきますそして不器用に指をなめてくださいます猫さまは奴隷めにも褒美をとらせるのです
というわけで骨抜きのわたしは、汚い猫の後を追いかけては「まる〜」とその名を呼ぶのですが、性格もかわいくないのでそう簡単に振り向いてくださりません人間の親指ほどしかない短いしっぽをピピッと左右に振って、うるさい黙れあっち行け、との意思を端的に表されます
しかし人間はめげません
彼女が機嫌よさげに横たわっているのを見るにつけ、そのうさんくさい目つきを拝もうとそばに寄るのです目やにが浮かんでいようものなら即座にティッシュを一枚抜き取り、やわらかいこより状にして目元にそっと近づけますすると猫も何をされるのか心得ていて「取らせてしんぜよう」とばかりに目を瞑り、鼻先を軽く上げてくれますその瞬間はまさに蜜月この猫が気持ちよく過ごせるなら何でもする、と奴隷の誓いを新たにします
さて、今わたしは実家にいないので汚い猫とは写真でしか会えません
今日も携帯の待ち受けを見て、お座りしながら見上げてくるうさんくさい視線を受けては、「まるちゃんかわいいね」と話しかける有様です禁断症状が出ています奴隷として合格のラインかと思われますが、それにしても猫って本当にどうしてあんなにかわいいのでしょうね
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