震災から一ヶ月経っても時計が三月で止まっている方々が多いです。
漏れずに私もその一人。
その期間で暗いニュースに目や耳を塞ぎたくなる事実も見たり聞いたりしてきました。
陥没した道路、道の無い道、建物や電柱に乗った車、基礎すらない友人などの家、ちぎれた人、遺体安置所など、現実か映画か分からなくなり眠れても悪夢しか観られません。
しかしそんな中でも譲り合いの心をもって接する方々ばかりで、奪い合いなどは耳には入りますが目にはしていません。
その譲り合いの一つのお話です。
震災後にドラッグストアの列に朝から並びました。
6時間程並んでやっと入店でき、一人5点までの購入制限で、お腹に溜まる物は無くガムなどばかりですが購入できるだけ幸せ。
離乳食のレトルトパウチをみつけたので息子にそれとお尻拭き。
そんな時に、私の後ろに並んでいたお父さんと息子さんの二人も入場制限の入れ替えで入店でき、息子さんが「お父さんビスケットだ～!!」と言って購入しようかと言う旨を告げたところ、お父さんが「これは赤ちゃんようだから、残しておいてあげよう。」と息子さんにそれを置かせたのです。
そしてそれをいただきました。
お腹に溜まるものを何でも良いから購入する他ないのに、とても有り難い出来事でした。
自分の命を縮めるかもしれないのに、なかなかできないことです。
そしてそれもプラスして精算しに出口へ。
値段は幾らなのかはわかりませんが、レジもなく、淡々とノートに商品名を書き記す若い女性店員と商品名を伝える若い男性店員は一つ一つの価格をお客さんには全く告げません。
幾らなのか分からないままに、それが売ってやっているだけお前ら幸せだろうと言うが如くにみえました。
トータルして告げられた金額は相場より多く見積もっても2000円増し以上で、火事場泥棒の価格でした。
しかし親子二人組みのお父さんの温かさで、何だか寒さも緩んだ一日でした。

miu 　 2011-04-17 00:25:06 提供：株式会社ニューポート