春の蕎麦は、空間の陰影を愉しむ、なんとも趣深い食べ物だと思う。
これまでと比べて明らかに力強くなった日差しが鮮明な影を作り出し
ひんやりとした暗がりから、新芽や花々の生命力あふれる光の照り返しのまぶしさに目を細め、
あるいは、暖かさに誘われ外に出た、往き交う人々の雑踏と胸のうちの興奮を空気に感じながら
たおやかさとけだるさの合間に身をおいて、ゆるりと酒を呑む。
運ばれてきた蕎麦がもたらす一瞬の肌寒さに春への移ろいを確かに憶えながら
ようやく意識は目の前にそれに集中する。
五感それぞれが順繰りに働いて、蕎麦を食べるまでの、自分のいる空間と時間を楽しむそのプロセスが楽しい。
それが私が蕎麦を好きな理由でもある。
しかし、そんな楽しみ方は蕎麦屋でのみ。
自分の家では、残念ながらそこまで味わうほどの空間もない。陰もない。
そして、なにより美味しい蕎麦が用意できない。
そのため、私は蕎麦は蕎麦屋で食べるものと決めているのだけど、
人間正直なもので、暖かくなると冷たいものが食べたくなる。
蕎麦は暖かくなって、まず食べたくなるもののひとつだ。
純粋に空腹を満たすためだけでよいから、
家で蕎麦を食べてみようかしら。
今年は珍しくそんな風に思えて、挑戦してみた。
鴨汁ならぬ、鶏のつけ蕎麦
すり鉢で擂った胡桃が香り高いくるみ蕎麦
正直、香り、弾力、のどごし、どれをとっても蕎麦は店のものと比べるのはあまりにも酷。
けれども料理を美味しく食べるだけなら、家でこれも十分あり。
特にくるみ蕎麦は、どこの店でも置いてある定番ではないから、
家ならではのお楽しみ。
(でも、美味しいお蕎麦屋さんで、胡桃蕎麦が食べられるならぜひそちらが食べたい)
こちら、半生そば1袋で2食分。
プレーンなものと、ごまを練りこんだものの、2種類。
他のものもいろいろ試してみようとは思うけど、こちらリピもいいなと思えるものでした。
真夏になると、暑さで蕎麦屋に行く道中がつらくなるから、
今から家蕎麦の楽しみをおぼえておくのもいいかと思った今年の春でした。
投稿日時:2013/04/12 : うるのブログ 提供:出光クレジット株式会社