小学校の卒業式の話です。

当時、私がいた6年3組の担任は、男勝りでバリバリ大阪のおばちゃん！というカンジの熱い先生でした。うちの小学校は授業とは別に、何かと先生がイベント事を持ってきて、みんなで参加して楽しむことがよくありました。音楽の先生が合唱コンクールへ参加しよう！と言い出して、みんなで猛特訓したこともありましたし、担任はＨＲで金子みすずさんの詩集をよく聞かせてくれたり、広島の原爆について話したりしてくれたりしました。
そんな事もあって、クラス全体での思い出もたくさん出来て、皆仲がとても良かったんです。

先生が担任だった楽しい1年間が終わり、いよいよ卒業式、という時にクラスの男子生徒１人だけが、用事で出席できずに卒業式を終えてしまいました。卒業式が終わって最後のＨＲを迎えた私たちでしたが、何かスッキリしない気持ちでいました。やっぱり6年3組みんなで卒業したかった、という思いを拭いきれず、先生に「後日みんなで集まって、6年3組だけの卒業式をもう一度したい！」と提案しました。誰が言い出したかは覚えていませんが、皆がその気持ちを同じくしていたことは覚えています。

今まで先生から何かと提案してクラスを引っ張っていくことはよくありましたが、クラス全体が一致団結して、先生に意見を提案するのはこの日が初めてでした。先生は笑って、ちょっと涙ぐみながら快くみんなの意見を受け入れてくれました。
「ほんまにええんやな？その日は土曜日やから、お母さん・お父さんはもちろん他の生徒や先生もおらへん、ほんまにうちらだけの卒業式になるんや。それでもみんな来てくれるんか？」と言い、今回のことは強制ではないから、あくまで参加したい人だけ来ること、そう話してその日のＨＲは終わりました。

当日、静かな小学校に登校しました。
6年3組のみんながその日全員で体育館にあつまりました。
先生が一人一人の名前を読み上げ、「はい！」と大きく返事をし、一人ずつ卒業証書を受け取りました。
みんな舞台に並ぶと、クラスの１人がピアノを弾き始め、誰もいない体育館の入口を見つめ、大声で歌いました。本番よりも大きな声で、みんな一生懸命に歌っていたように思います。誰もいない体育館は、いつもより声が響いて、その空間は私たちだけしかいないことが非常によく感じられました。あぁ、これで本当に卒業だ、これで最後なんだ、と実感しました。みんな、歌いながら泣いていました。
私たちは、この日をもって小学校を卒業しました。

当時から10年以上経っているのですが、今でも忘れられない、大切な大切な思い出です。

decon* 　 2012-02-27 16:12:05 提供：湘南ゼミナール