『航空会社スターフライヤー / Mother Comet』
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あれはもう25年も前のこと。
弟が入院することになりました。
私は当時小学生でしたが、年の離れた弟はまだ3歳。
そんな小さな弟が入院して手術をしなくてはならないなんて、
本当にかわいそうでした。
私が代わってあげたいと本気で思いました。
母は毎日、弟のいる病院に通いました。
私は学校もあるので毎日は行けない代わりに、
毎日母に弟宛の手紙を預けていました。
母が夕方病院に行く時には必ず私も一緒について行きました。
でも、弟の入院しているのは小児病棟。
子供がかかりやすい病気がいろいろあるためか、
小児病棟の受付より先には子供である私は
入ることが出来ませんでした。
「ちょっと待っててね。」と言い残し、
いそいそと小児病棟の先へ入って行く母。
私は、私も大人だったら良かったのに、と悔しく思いながらも、
受付より外にあるベンチに座り、ひとりじっと待っていました。
たまに子供の声が聞こえてくると、
そこに弟の声がないかと耳を澄ませながら。
「お待たせ。」
30分ほどすると母が私の待っているベンチに戻ってきます。
「え?もういいの?」と聞くと、
「うん、毎日来てるからね。あなたを待たせるのもかわいそうだし。」
と母は言ってくれます。
でも、私がここで待つのなんかより、
もっとずっとずっと長い間弟は母を待っているはず。
毎日毎日ひとりで夜を過ごし、
母が来るのを首を長くして待っているに違いない。
それを考えれば、私がたまにここで母を待つのなんて、
3時間でも4時間でもへっちゃらなのに…。
私はそう考えましたが、母がこう付け加えました。
「それにね、あんまり長く病室にいると、
余計ママが帰ってしまった後に寂しくなってしまうと思うの。
だから、普段もなるべく短くするようにしてるのよ。」
そっか、そうかも知れない。
確かに、いることに慣れてしまうと、
いない時の悲しみは増幅するもの。
今の私にとって弟がそうであるように。
その日も私は小児病棟の外でひとり母の戻りを待っていました。
すると、小児病棟の方からひとりの看護婦さんが近づいて来ました。
「たっくんのお姉さんよね?」
『たっくん』というのは、弟の愛称です。
「はい、そうです。」
「いつも偉いわね、ひとりできちんと待っていて。
たっくんから、大好きなお姉ちゃんの話はよく聞いてるのよ。
お姉ちゃんとお話したいなぁって言ってたわ。」
「はい…。」
人見知り気味の私はそう返事することしかできませんでした。
看護婦さんは続けました。
「あのね、もし良かったらなんだけど、
カセットテープに声を録音して、たっくんにお話してみない?」
私はびっくりしました。
「そんなことができるんですか?」
静かな病院に声が響き、
私は思わず大きい声を出してしまっていたことに気づきました。
「うん、できるわよ。
じゃぁ、カセットテープレコーダーを持って来るから少し待っててね。」
そう言い、看護婦さんは小児病棟の中に入って行きました。
しばらくして、看護婦さんが戻って来ました。
「お母さんに、あともう30分くらい
たっくんとお話していてもらうように言って来たから、
ちょっと中庭の方に行きましょうか。
ここだと声が響くからね。」
看護婦さんに導かれ、
私たちは病院の中庭に場所を移しました。
中庭に着くと看護婦さんが、
「何話すか決めた?」と聞いてきました。
私は、あ、そっか。一方的に話すんだから、話すこと決めないと、
とその時やっと気がつきました。
「えっと、まだ…」
「そう。まぁ、録り直しもできるから、
ちょっとテストで録ってみましょうか。はい。」
そう言って、看護婦さんは録音ボタンを押しました。
「えっと…、たっくん元気ですか?
お姉ちゃんは元気です。
………。
あ…、ごめんなさい。」
私は何を話していいのか困ってしまい
後が続きませんでした。
看護婦さんは録音ボタンを切り、
「いつもお手紙に書いているようなことをお話すればいいんじゃない?
テープは長いからスラスラ話そうとしなくていいし、
緊張しなくても大丈夫よ。」
と言ってくれました。そして、
「ところで、普段たっくんとはどんなことして遊んでるの?」
「兄弟喧嘩することなんかもあるの?」
などという話で、私の気持ちを和らげてくれました。
しばらくして私は再度テープレコーダーに向かいました。
「たっくん元気ですか?
お姉ちゃんは元気です。
たっくんに会えないと、とっても寂しいです。
でもたっくんも病気でも頑張ってるんだと思って、
お姉ちゃんも寂しくても我慢します。
病院のご飯ちゃんと食べてますか?
残さないで全部食べるんだよ。
お友達できましたか?
いじめられたらすぐ言うんだよ。
早く元気になって一緒に遊びたいね。」
私はいつの間にか涙を流しながら
テープレコーダーに話しかけていました。
看護婦さんがそっと
背中に暖かい手を添えてくれていました。
弟の手術は成功し、半年ほどの入院生活を終え、
弟は元気な笑顔で家に帰って来ました。
そんな弟の手には、私の声が録音されたテープと、
あの時の看護婦さんの
退院祝いの声が録音されたテープが
大事そうに握られていました。
あれから25年。
小さなたっくんは、パパになりました。
もう、あの頃のたっくんより大きくなる女の子がいます。
でも、その子のお母さんは、まだ若すぎたのか、
子育てに疲れて家を出て行ってしまいました。
まだ女の子が1歳になるかならないかの頃でした。
それから弟は男手ひとつで女の子を育てています。
仕事も忙しく大変だと思います。
でも、とっても娘ちゃんをかわいがって
一生懸命育てています。
小さかったたっくんが、とっても大きく見えます。
そんな私の大切な弟。
これからも大変なことがあるかも知れないけど、
お姉ちゃんはいつも見守って応援しているよ。
ガンバレ、ガンバレ、おとうと!
ガンバレ、ガンバレ、たっくん!!
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みのり 2010-02-16 20:44:54 提供:株式会社スターフライヤー
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黒い飛行機が特徴のスターフライヤーは、東京(羽田)-北九州線、東京(羽田)-福岡線、東京(羽田)-大阪(関西)線、福岡-名古屋線、東京(羽田)-山口宇部線の5路線を運航する航空会社です。